大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)2008号 判決

記録を調査するに、本件起訴状記載の公訴事実中には「第一、被告人佐野たけよは昭和二十四年九月二十三日頃橫浜市鶴見区汐入町一丁目二十五番地佐野芳夫宅に於て、連合国占領軍の財産である煙草三百本(十個入)を所持し、」とあるのに、原審判決書には「第一、被告人佐野たけよは(中略)連合国占領軍に随伴する者の財産である煙草三百本(十個入)を所持し、」と判示してあつて、右煙草三百本の所有者について、両者間に相違があること、及び、原審において、右煙草の所有者の点につき、刑事訴訟法第三百十二条所定の手続を履践した形跡の認められないことは、いずれも所論のとおりである。しかし原判決が、本件に適用した昭和二十二年政令第百六十五号第一条第一項には、「連合国占領軍、その将兵又は連合国占領軍に附属し若しくは随伴する者の財産(連合国占領軍の発行するドル表示軍票、英国占領軍の発行するポンド表示軍票又は英国占領軍の使用する一ペニー若しくは半ペニーのオーストラリヤ銅貨幣を除く。)は、何人も公に認められた場合を除く外、これを收受し、又は所持してはならない。」と規定してあり、同政令第三条第一項は、「第一条第一項又は前条の規定に違反した者は、これを五年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。」と規定してあつて、何人も、法定の除外事由なくして、同政令第一条第一項所定の財産を收受又は所持した以上、その財産の所有権が、連合国占領軍にあると、その将兵又は連合国占領軍に附属し、若しくは随伴する者にあるとを問わず、等しく、同政令第一条第一項の違反として、同政令第三条により処罰を免れないものと解されるので、いやしくも法定の除外事由なくして、同政令第一条第一項所定の財産を收受し、又は所持したと言う犯罪事実自体が同一である限り、その財産の所有権が、同条項所定中のいずれの者に属するかは、同政令違反罪の成否に、何らの消長をも来さないばかりでなく、右のように、犯罪事実自体に差異がない限り、公訴事実中に、連合国占領軍に属する財産とあるものを判決において、連合国占領軍の将兵、又は連合国占領軍に附属し、若しくは随伴する者の財産と認定したからと言つて、この程度の差異のみによつては、必ずしも、全然別個の事実を認定したものとも認められない筋合であつて、このように、犯罪事実自体に差異がなく、しかも、それを別個の事実と認めしむるに足らない程度の差異の如きは、未だもつて訴因の同一性を失わしめるものではないと解するのが相当である。今本件についてこれをみるに、被告人が、法定の除外事由なくして、昭和二十四年九月二十三日頃橫浜市鶴見区汐入町一丁目二十五番地佐野芳夫宅において、前示政令第一条第一項所定の財産である煙草三百本(十個入)を所持していたと言う犯罪事実自体については起訴状の訴因と、原判決の認定とが全く同一であつて、唯、前者においては、その煙草が、連合国占領軍の財産であるとしているのに対し、後者においては、これを連合国占領軍に随伴する者の財産であると認定した点において、差異があるだけであつて、このような差異のみによつては、全然別個の事実を認定したものと認められないところであるから、この程度の差異は、訴因の同一性を害するものではないと認めるのが相当であるばかりでなく、当事者としても、これがため、特に、その攻撃防禦の方法に、別段の変更を要するものとも考えられないから、原審において、特に、この点につき、刑事訴訟法第三百十二条所定の手続を履践することなくして、前示のような判決をしたからと言つて、原判決に、所論のような審判の請求を受けた事件について判決をせず、審判の請求を受けない事件について判決をした違法があるものと言うことはできない。故に論旨は採用できない。

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